診療のご案内

病気の説明

高血圧
高血圧は血圧の高い状態が続く病気です。
血圧とは、血管の中を血液が流れる際に、血管の壁にかかる圧力のことです。健康な人の血圧は、収縮期血圧(心臓が縮んで血液を送り出したときの血圧。最大血圧)が140mmHg未満、拡張期血圧(心臓が拡張したときの血圧。最小血圧)が90mmHg未満です。このいずれかが上回っている状態が、高血圧です。
高血圧の問題点は、放置すると自覚症状のないままに全身の血管がダメージを受けて、やがて脳、心臓、腎臓といった重要な臓器を障害していくことが挙げられます。こうした障害が進むと、脳梗塞や脳出血、心筋梗塞や狭心症といった命にかかわる病気を引き起こしたり、腎不全になって透析が必要になったりします。また、高血圧の状態が持続すると、糖尿病や骨折を発症する確率が高まることも知られています。さらに、最近では認知症との関係も指摘されるなど、高血圧はさまざまな病気の引き金になることもわかってきています。
さて「どのくらいまで血圧値を下げるのが望ましいか」という、具体的な数値目標までご存知の方はまだ少ないのではないでしょうか。脳卒中や心臓病を予防するため目標とすべき血圧値は、自宅で測定した家庭血圧で135/85mmHg未満、糖尿病を合併している人は125/75mmHg未満です。患者さんのなかには、これらの目標値には達していないにもかかわらず「私は高血圧の薬を飲んでいるから大丈夫」と考えている方もいらっしゃいます。しかし、脳卒中や心臓病の発症を予防するには、目標値に達するまで血圧をしっかりと下げることが大切であり、日々の自己測定が不可欠であります。
また、高血圧患者さんにとって“減塩”は大きな課題です。日本人は世界的に見て“Salt eaters”と呼ばれるほど塩分摂取量の多い人種であり、塩分の過剰摂取は高血圧治療を難しくする大きな要因となっています。日本高血圧学会では高血圧患者さんの1日あたりの塩分摂取量を6g未満とすることを推奨していますが、現在の日本人の平均塩分摂取量は1日あたり10~11gとなっており、ここにはいまだ大きな開きがあります。
減塩をうまく継続するコツのひとつは、徐々に塩分を減らすことです。塩分摂取量を1日6g未満に押えるのは非常に高い目標ではありますが、減塩の努力によって血圧値が4~5mmHg低下するだけでも、脳卒中などの疾患を予防する効果はかなり高まります。また、降圧薬の種類によっては、減塩することで薬の効き目がよくなるものもあります。また、血圧が下がれば降圧薬を減らし、経済的な負担も軽減できる可能性があるなど、減塩にはさまざまな恩恵があると言えます。最後に高血圧には加齢などに伴って起こり、原因が特定できない“本態性高血圧”と、何らかの原因によって血圧が高くなる“二次性高血圧”があることもご説明いたします。このうち二次性高血圧は降圧薬による治療だけでは十分に血圧が低下せず、原因を取り除くことで血圧が下がることがあります。たとえば、20人に1人の割合でみられる原発性アルドステロン症は、副腎にできた腫瘍が原因でアルドステロンというホルモンの分泌が過剰になり、それが原因で血圧が高くなってしまう病気です。これを発見するには、血液検査や各種画像検査のほか、必要に応じて副腎の近くにカテーテルを挿入して行う副腎静脈血サンプリングという検査が必要になることもあります。精査の結果、原発性アルドステロン症であると判明すれば、薬物治療や重症例では手術で腫瘍を摘出するなどの治療を行います。二次性高血圧には原発性アルドステロン症のような病気のほかに、一部の漢方薬などに含まれる成分などが原因で引き起こされることもあります。もしきちんと降圧薬を飲んでいても血圧が十分に下がらない場合には、一度、専門医・かかるつけ医に相談することがよいでしょう。当院には動脈硬化を調べる機器がありますので、一度検査を受けてみられることをご提案いたします。
脂質異常症
脂質異常症(高脂血症)は、血清脂質値が異常値を示す病気です。
血清脂質値とは、血液の中の脂肪分の濃度(濃さ)を示しています。血液の中の脂肪分はいくつかのタイプに分けられ、健康な人は、LDL-コレステロールが140mg/dL未満、HDL-コレステロールが40mg/dL以上、トリグリセライド(中性脂肪)が150mg/dL未満です。この三つの値のいずれかがその範囲を超えた状態が、脂質異常症です。ただし、LDL-コレステロールが140mg/dL未満であっても120~139mg/dLの間は「境界域」に該当し、動脈硬化を引き起こす脂質異常症以外の病気(高血圧や糖尿病など)がある場合などは治療の必要性が高くなります。
なお、脂質異常症という病名についてですが、これは以前、高脂血症と呼ばれていたものとほぼ同じです。しかし、善玉であるHDL-コレステロールは高いほうが良いので、以前の「高脂血症」という病名ではそぐわない点があったため、最近は脂質異常症と呼ばれています。
血清脂質値が異常でも、通常、症状は現れません。症状が現れないのにもかかわらず、知らず知らずのうちに、全身の血管が傷ついていきます。その影響は主に、動脈硬化となって現れます。 動脈硬化を起こすのは、活性酸素によって酸化LDLとなった真の悪玉です。そこで抗酸化物質(ビタミンA・C・Eとポリフェノール、鮭などの魚に含まれる赤い色素はアスタキサンチンという成分)を食事や食間にとって活性酸素を消滅させることが大切です。
動脈硬化が進むと、心臓や脳などの血液の流れが悪くなります。そして、あるとき突然、狭心症や心筋梗塞、脳梗塞などの発作が起き、QOL(生活の質)が低下したり、ときには命にも関わります。
脂質異常症と指摘されたら、心臓や脳の発作を起こさないため、血清脂質値(とくに悪玉のLDL-コレステロール)に、いつも気をつけて、服薬している方でも薬に頼るだけではなく、食事や日常のひと工夫で血液性状はよくなります。一般的にコレステロールのとりすぎが気になりますが、口から入る量は体内でつくられる量の1/5程度です。コレステロールは体に不可欠な成分なので、口から入らないと体内でコレステロール生産が高まります。怖がらず、コレステロールの高い卵も毎日1/2個は食べる様にしましょう。1日のコレステロール摂取量は300mgが目安です。一番大切なポイントはコレステロールの排泄量を増やすことです。その体外排泄は、胆汁酸(コレステロールが原料)として便中に排泄されます。しかし、コレステロールは重要な成分なので、食物繊維がない時には再吸収し、リサイクルされて使われます。そこでねばねばヌルヌルした水溶性食物繊維を含む食品(納豆、モロヘイヤ、オクラ、わかめ、きのこ、やまいも、果物など)をよく噛んで食べることが重要です。また、油を制限すると胆汁酸は使われないので、毎食小さじ1杯は油をとることも大切な点です。肥満があれば減量し、動物性脂肪やエネルギーの取りすぎに注意し、魚に含まれるオメガ3脂肪酸のEPA(エイコサペンタエン酸)やDHA(ドコサヘキサエン酸)を積極的にとりましょう。脂ののった新鮮な魚は刺身や焼き魚、煮魚がおすすめの調理法です。調理にはオレイン酸がたっぷりのひまわり油やオリーブオイルが最適です。また大豆に含まれるたんぱく質と食物繊維には、コレステロール低下作用があるだけでなく、納豆では納豆キナーゼという酵素が血栓を溶かし、過度の血液凝集を防いで、血液をサラサラの状態に維持してくれます。またたまねぎ、にら、にんにくなどに含まれる“つん”とする成分も血液をサラサラにしてくれる作用があり、適度な摂取が必要です。
糖尿病
糖尿病は、血糖値が高くなる病気です。
血糖値とは、血液の中の糖分(ブドウ糖)の濃度(濃さ)を示しています。健康な人の血糖値は食事の前の空腹時で80~110mg/dLぐらいです。食事をとり、胃腸で食べ物を消化吸収し、ブドウ糖が血液の中に入ってくると、血糖値は高くなります。しかしそれでも、上限は140mg/dLぐらいです。血糖値がこれよりも高い状態を「高血糖」といいます。そして、その高血糖が続いている状態が、糖尿病です。
糖尿病には、インスリンの分泌異常が原因の1型糖尿病と、インスリンの機能異常である2型糖尿病があります。血糖値が極端に高い場合には、命の危険もあるので緊急治療が必要です。しかし、糖尿病の患者さんがそのような危険な状態に陥ることはめったになく、通常はほとんど症状に現れない程度の高血糖です。症状が現れないのにもかかわらず、からだの中では知らず知らずのうちに、高血糖の悪影響がじわじわと広がり、全身の血管に動脈硬化を起こします。そして何年かたつと、「合併症」と呼ばれるさまざまな病気や身体の障害が現れます。
糖尿病の治療には、薬物治療以外に、食事療法と運動療法が重要であります。食事療法は患者さんの身長と日常的な活動度から適切な摂取カロリーが計算できるので、そのエネルギー量を守る食生活をするようにします。具体的には3食に分けて、腹七分目、脂肪分は控え、食物繊維をたくさんとるようにします。また運動療法ですが、歩行運動であれば1回15~30分間を1日2回が目安です。できれば毎日行います。運動療法は禁止あるいは制限した方が良い場合もあります(空腹時血糖値250mg/dL以上、増殖網膜症による新鮮な眼底出血、腎不全、虚血性心疾患や心機能障害、骨・関節疾患など)ので詳しくはかかりつけ医と相談してしっかりしたプランを立てましょう。
糖尿病の三大合併症といえば、まずは手足のひどいしびれが続いたり、全身にさまざまな影響が現れる糖尿病性神経障害があります。次に失明することもある糖尿病性網膜症があり、さらに週に約3回、半日がかりで透析を受けないと生きていけなくなる糖尿病性腎症があります。これらの合併症を起こさないために、糖尿病と言われたら、血糖値が高くならないように、いつも気をつけておく必要があります。糖尿病は放置すればとても怖い病気ですが、しっかり治療を行えば、普通に生活を送ることができる病気です。
痛風
痛風は「風が当っただけで痛い」と表現されるほどの激痛が発作的に起こる関節炎です。主に足の親指の付け根付近に生じます。患者さんの多くは30~50代の男性に多く、女性が痛風になることは少ないとされています。
痛風発作の激しい痛みは数日間続き、手当ての有無にかかわらず、やがて治まってくるのがふつうの経過です。このため患者さんの中には、発作の原因である「高尿酸血症」を治療せずにいる人が少なくありません。高尿酸血症そのものは、全く自覚症状がない病気だからです。 高尿酸血症とは、からだの新陳代謝で発生する老廃物である「尿酸」が増え過ぎている状態です。尿酸コントロールには「6-7-8のルール」が適応されます。8以上は多くの場合、薬物治療が必要で、6以下をめざします。そして7以下は正常、7を超えると高尿酸血症です。
食生活ではプリン体の摂取と排泄に注意が必要です。プリン体の多く含まれる食品は、痛風の原因となる尿酸を多く産生してしまうため、食事からの摂取を控える必要があります。プリン体の摂取は1日400mg以下が適量です。プリン体は、アルコール特にビール、レバー、干し物、魚介類や肉類の煮汁に多く含まれますのでこれらの過剰摂取には注意が必要です。また水分をしっかり摂取すること、尿酸は酸性ですので、尿が中性からアルカリ性に傾けば溶けやすくなります。海藻類、野菜、イモ、果物を摂取すると、余分な尿酸は排泄されるようになります。高尿酸血症のために体内で結晶化した尿酸は、関節や腎臓などに溜まります。関節に溜まった尿酸の結晶が痛風発作の原因となります。痛風そのものは短期間で治まっても、高尿酸血症を治さないことには体内の尿酸結晶はそのまま存在し続けます。 その結果、痛風発作が再発したり、腎臓中の尿酸結晶が原因で腎臓病になったり、尿路結石ができたりといった、さまざまな合併症が起こります。また高尿酸血症の患者さんはたいてい、メタボリックトンドロームに該当し、動脈硬化が進行しやすい状態にあります。治療は、生活習慣の改善が基本ですが、薬物治療も行います。痛風発作中は、まずは鎮痛剤で炎症をコントロールし、炎症が治まったら、尿酸を下げる薬物を投与していきます。
気管支喘息
気管支喘息とは、息をする時の空気の通り道(気管・気管支)に、慢性の炎症がおき、そのために気道がせまくなり(気道狭窄)、繰り返し咳や、ゼ―ゼーヒューヒューなどの音がする喘鳴、呼吸困難を生じる呼吸器系の病気です。この気道狭窄は、自然に、あるいは治療により、元の状態に戻りますが(可逆性と言います)、治療をせずに放置すると、あるいは自己判断で治療を中断すると、繰り返し起きる炎症により、気道の構造が変化し(リモデリングと言います)、元の状態に戻らなくなってしまいます(非可逆性)。そうなると、喘息症状はより起きやすく、より重くなるので、早めに適切な診断を受け、早く治療を始めるべきです。
炎症は好酸球やリンパ球、マスト細胞などの白血球と、気道を構成する細胞(気道上皮細胞や平滑筋細胞など)が関係して、さまざまな原因物質(アレルゲン)や環境変化に対し、過敏に反応するようになります(これを気道過敏性と言います)。アレルゲンには、ダニやハウスダスト、イヌやネコなどの動物のフケや毛など、さまざまありますので、これらに対しては、アレルギー反応があるかを調べるIgE抗体検査があります。しかし、アレルゲンが分からない場合や、気候などの環境変化、ストレスやアルコールなどでも生じることもあります。  
気管支喘息の慢性炎症にはいろいろなタイプ(フェノタイプ)があることがわかってきました。大きくは好酸球性炎症(アレルギー)とそれ以外の炎症に分けられます。大事なことは、炎症の主因をしっかり診断し、適切な治療薬を選択することです。好酸球性炎症には、吸入ステロイド薬/長時間作用型の気管支拡張剤の合剤、ロイコトリエン受容体拮抗薬、キサンチン誘導体などが使われます。また難治性の喘息には抗コリン薬が選択されます。また最近ではアレルギー反応に重要な影響を及ぼすIgEやIL-5という炎症性物質の働きを抑える中和抗体の投与が、喘息の新たな治療方法として注目されています。当院には気管支喘息に診断に必要なスパイロメーターや、好酸球性炎症を判断する機器がありますので、長引く咳でお悩みの方は気軽に当院を受診ください。適切な治療を受けていただければ、症状はしっかり押さえられ、喘息症状のない普通の生活を送っていただけます。
咳喘息
咳喘息は、慢性的に咳が続く気管支の病気です。一般的な喘息と同様、気道(呼吸をするときに空気の通る道)が狭くなり、いろいろな刺激に対して過敏になって、炎症や咳の発作が起こりますが、喘鳴が聴取されることはありません。
室内外の温度差や、たばこの煙を吸う受動喫煙、運動、飲酒、ストレスなどのほか、ホコリやダニなどのいわゆるハウスダストが発作の要因になるといわれており、患者数は年々増加しています。この病気は、特にアレルギーのある人に多いとされています。アレルギー反応によって、気道が炎症を起こしてしまうためです
かぜに併発して起こることが多く、かぜをひいたあとに2~3週間以上、咳が続くことがあれば、この病気の可能性があります。適切に治療が行われないと、30~40%の人が気管支喘息に移行すると言われています。女性に多い傾向があり、しばしば再発を繰り返します。このような症状がある方は、早めに病院を受診することが必要です。
アトピー咳嗽
アトピー咳嗽は、咳だけが慢性的に続く気管の病気です。乾いた咳が1か月以上続き、喘鳴(ヒューヒュー、ゼイゼイといった呼吸音)がないのが特徴です。咳は夜から早朝に出ることが多く、タバコの煙やエアコンによって誘発されることもあります。その名前の通り、アトピー素因があることも特徴のひとつです。
アトピー咳嗽と症状がよく似ているのが咳喘息です。アトピー咳嗽が「気管」の病気であるのに対し、咳喘息は「気管支」の病気で、初診時でこのふたつの病気を区別することは非常に難しく、ほぼ不可能です。アトピー咳嗽かどうかは、初診時に処方される薬の効果をみて診断されます。「気管支拡張薬」で効果が出なかった場合かつ、「ヒスタミンH1受容体拮抗薬(咳喘息の時に使用する抗アレルギー薬とは異なる種類のもの)」、「吸入ステロイド薬」に効果があった場合はアトピー咳嗽となります。喘息の前段階またはその亜型と考えられており、気管支拡張剤以外の薬剤をある一定期間服用することが必要です。
COPD
COPD(慢性閉塞性肺疾患)という病名は、あまり聞き慣れないかも知れません。しかし、「肺気腫と慢性気管支炎の二つを合わせたもの」と聞ければ、「その病名なら知っている」という方も多いのではないでしょうか。肺気腫と慢性気管支炎の症状は一人の患者さんに重なって現れることが多いうえに、なにより、どちらも汚れた空気を長年吸い続けた結果、発病するという、原因が同じ病気であります。そのため現在は国際的にCOPDという病名で統一されています。
COPDでは、肺の内部の肺胞が破壊されたり気管支が狭くなって、息苦しさ、とくに息を吐き出しにくいという症状が現れます。また、多くの場合、せきやたんが長く続きます。専門的には、気管支を広げる薬を用いても1秒率(空気を目いっぱい吸った後、可能な限り速いスピードで息を吐き出して、最初の1秒間で吐き出せた量を肺活量で割った値)が70パーセント未満で、それが他の病気によるものではないとき、COPDと診断されます。 原因はほとんどが喫煙です。
COPDは進行性の病気です。初めのうちは、階段を上るなどの運動時だけ症状が現れるので「年のせい」と見過ごしがちですが、次第に自宅内でトイレにいくなどの軽い動作でも息苦しくなってきます。そのうち、ふだんの身体活動量はさらに低下し、食事を摂るのも大変になって栄養状態が悪化し、食べていても極端にやせてしまい、肺の障害から血圧や心臓の合併症も出てきてしまいます。治療の基本は、早期に診断し、禁煙すること、進行を遅らせる抗コリン薬や長時間作用型の気管支拡張剤を服用することです。放置すれば、早い方では50~60歳台で在宅酸素療法を開始しないと命に関わるようなたいへん辛い病状になってしまいます。当院には診断に必要なスパイロメトリーという機器があり、禁煙外来も実施していますので、症状的にご心配の方は、是非一度受診されてください。
副鼻腔気管支症候群
鼻の空気の通り道である鼻腔のより奥まった部位に副鼻腔という空間があります。この副鼻腔に炎症がおこると、副鼻腔炎になります。この場合、睡眠中に鼻汁が喉のほうに降りてしまい、気管支に入って気管支炎の原因になります。また、口呼吸のために加湿・加温・清浄化されない空気が吸入され、気管支炎を誘発します。
慢性副鼻腔炎に慢性気管支炎、びまん性汎細気管支炎、あるいは気管支拡張症が合併した病気が副鼻腔気管支症候群です。慢性副鼻腔炎の約5%に合併し、ほとんどが罹病期間の長い中年の人に見られます。
この副鼻腔気管支症候群の方では、免疫力が下がったり、細菌に対する気道の防御機能が弱くなって、慢性の細菌感染が起こり、鼻と気管支の両方にさまざまな症状が現れます。具体的には、1.呼吸困難を伴わない咳嗽(しばしば湿性)が8週間以上継続し、2.(1)後鼻漏,鼻汁および咳払いといった副鼻腔炎に伴う自覚症状がある、(2)上咽頭や中咽頭における粘液性ないし粘液膿性の分泌物(後鼻漏)の存在ないしcobblestone appearanceの存在といった副鼻腔炎に伴う他覚所見がある、(3)副鼻腔単純X線写真ないし副鼻腔X線CT検査において液貯留あるいは粘膜肥厚といった副鼻腔炎を示唆する画像所見がある、(4)慢性副鼻腔炎の既往がある、の4つの所見のうち1つ以上を認める。3.14ないし15員環マクロライド系抗菌薬や去痰薬が有効であることの3基準が簡易診断基準として使われています。
鼻づまり、鼻汁、嗅覚障害などの鼻・副鼻腔炎の症状に、せき、たん、息切れ、微熱などの気管支炎の症状が加わることがあれば、本症候群の可能性がありますので、適切な治療を受けましょう。
結核
結核菌による感染症です。肺に感染を起こすことが最も多いのですが(肺結核)、リンパ節、腸、骨などにも感染します(肺外結核)。ここでは最も患者が多い肺結核について主にご説明致します。
かつては国民病といわれ、不治の病と恐れられましたが、患者数は減少しています。しかし日本は先進国の中では患者さんが多く、平成23年には22,681人が発病しています。
患者さんが咳をしたときにでる細かいしぶきに含まれる結核菌から菌のみが乾燥して空中を漂い(飛沫核感染、別名空気感染)、他の人が息をすると肺の中に吸い込まれて感染します。感染してすぐに発症はせず、感染後発症する人は10~15%程度です。
だるさ、発熱、体重減少、寝汗などが出ることもあります。せき、たんが出る場合、他人にうつる可能性が高くなります。感染しやすい人は免疫のない若者、糖尿病、がん、慢性関節リウマチなどの自己免疫疾患で治療中の人、人工透析中、後天性免疫不全症候群(エイズ)の方などです。せきが二週間以上続く時にはレントゲン検査を受け、早期に診断をしましょう。薬物治療にて完治可能な感染症ですので、症状のある方は、できるだけ早めに病院を受診しましょう。
非結核性抗酸菌症
非結核性肺抗酸菌症は結核菌以外の抗酸菌による感染症で、肺に感染を起こします。わが国では抗酸菌の8割以上がマック菌(M.avium complex)、1割がカンザシ菌(M.kansasii)という菌であり、残りがその他の様々な菌で占められています。中高年の女性に罹患が多い傾向にあります。
非結核性肺抗酸菌は土や水などの環境中に存在する菌で、結核菌とは異なり人から人には感染しません。数年から10年以上かけて、ゆっくりと進行することが多く、普通の免疫状態であれば、結核のように急速に進行することは稀です。病変好発部位は中葉、舌区と呼ばれる心臓に接している部位になります。
この病気は初期では無症状のことが多く、進行してくると呼吸器の症状(せき、たん、血痰、息切れなど)や、全身症状(発熱、体重減少)などが出現します。この病気と思っていて肺結核だったと判明する人が少なからずおられることや、かなり進行した状態で診断される人、喀血にて病院を受診したら、診断された人などおられますので、症状的に気になる場合は、早めに病院を受診しましょう。
肺癌
日本人の死因の中で最も多いのが‘がん’ですが、その中でも肺がんがトップです。肺がんは、ご存じのようにたばこを吸う人がかかりやすいですが、喫煙習慣のない人にもおこり得る病気です。肺がんにはいくつかのタイプがあり、小細胞肺癌や肺扁平上皮がんというタイプのがんは、喫煙との関係が最も強いです。 肺扁平上皮がんは、気管から気管支の内部を覆っている扁平上皮という細胞ががん化したものです。扁平上皮がんの発生には、ストレスや片寄った食生活も関係しています。 一方非扁平上皮癌(多くは腺癌)では、喫煙歴はないか、あってもそれほどヘビースモーカーでなくても、そのがん化のメカニズムに遺伝子異常が関与しているタイプがあります。
初期の段階では、がんが気管支の内表面に限られて限局しているので、X線検査をしても発見できません。ときに血痰として異常に気づくことがあります。この段階では、CT検査にて偶然発見される以外に診断することは困難です。大きくなれば、気管支の外壁にも現れ、X線検査でも発見されるようになります。さらに、肺には血管が多数あるので、気管支外壁へ発育すると血液にもがん細胞が入って、ほかの臓器に転移します。
診断には、喀痰検査で痰の中にがん細胞が混ざっていないかの有無を調べたり、生検といって、気管支内視鏡や経皮的針生検にて細胞・組織を採取することが何よりも重要で、CT検査、PET検査、脳MRIなどで全身検索を行い、ステージングを行い、治療方針を決定します。
治療の基本は早期であれば、外科的切除術で、進行期では放射線治療、抗がん薬による治療が行われます。抗がん剤には、先にご説明したように、遺伝子異常に特化した分子標的薬や、最近では免疫療法としてPD-1、PD-L1という分子の働きを阻害する免疫チェックポイント阻害薬が登場しています。しかし何よりも重要なのは肺がんにならないようにするために、禁煙することと、健診をしっかり行い早期の段階で診断し治療することであることはいうまでもありません。
睡眠時無呼吸症候群(SAS)
睡眠中に無呼吸を繰り返すことで、様々な合併症を起こす病気です。
成人男性の約3~7%、女性の約2~5%にみられます。男性では40歳~50歳代が半数以上を占める一方で、女性では閉経後に増加します。
空気の通り道である上気道が狭くなることが原因です。首まわりの脂肪の沈着が多いと上気道は狭くなりやすく、肥満はSASと深く関係しています。扁桃肥大、舌が大きいことや、鼻炎・鼻中隔弯曲といった鼻の病気も原因となります。あごが後退していたり、あごが小さいこともSASの原因となり、この場合は肥満でなくてもSASになります。
症状としては、いびき、夜間の頻尿、日中の眠気や起床時の頭痛などを認めます。日中の眠気は、作業効率の低下、居眠り運転事故や労働災害の原因にもなります。放置すれば、合併症である高血圧、多血症、不整脈、虚血性心疾患(狭心症、心筋梗塞)、心不全、脳血管障害、糖尿病、肺高血圧症、インポテンツなどが認められるようになり、早期に診断し、適切な治療として減量、生活習慣の改善、在宅酸素療法(CPAP)、口腔内装置、手術治療を行うことが重要であります。
アレルギー性鼻炎
アレルギー性鼻炎は、くしゃみと水性鼻汁、鼻閉を主な症状とする疾患で、風邪でもないのに突然鼻水、くしゃみ、鼻づまりを繰り返します。主な原因物質(抗原)は一年を通して症状を起こすダニやペットと、一年のある時期だけ症状を起こす花粉です。スギ花粉であれば、1月から4月にかけて、ヒノキ花粉であれば2月から5月に、ブタクサ花粉であれば8月から10月に症状が現れます。まず、抗原が鼻粘膜から生体内に入り様々な細胞の作用をへてIgE抗体が産生されます。このIgE抗体は鼻粘膜の肥満細胞に付着します。このようなヒトの鼻に再び抗原がはいってくると肥満細胞上のIgE抗体と抗原が結合し肥満細胞からヒスタミンなどのアレルギー反応をひきおこす物質(化学伝達物質)が放出されます。これらの化学伝達物質は鼻の粘膜の神経や血管や粘液を産生する場所(腺組織)に作用し、発作性にくしゃみ、鼻汁、鼻閉を生じます(即時反応)。また、遅れて集まってきた炎症細胞から放出される物質によりさらに鼻閉を生じます(遅発反応)。これらの症状は、本来入ってきた異物(抗原)をくしゃみで吹き飛ばし、鼻汁で洗い流し、鼻閉でさらに異物を入れない様にする生体防御のための反応です。しかし、過剰に反応が起こってしまうと日常生活上支障がおこります。治療の第一歩はアレルギー性鼻炎の原因である抗原の回避と除去です。薬物療法は最も多く行なわれていますが、症状や重症度に応じて抗ヒスタミン薬や鼻噴霧用ステロイド薬などを用います。鼻づまりが強い例などでは手術も行なわれます。根本的な体質改善が期待できる治療方法としてアレルゲン免疫療法があります。これはアレルゲンを少量から投与して体をアレルゲンに慣らしていくものであり、最近注目を集めています。
虚血性心疾患
「心筋梗塞」や「狭心症」をまとめて「虚血性心疾患」といいます。
心筋梗塞
日本人の死亡原因の第2位が心臓の病気なのですが、その多くが心筋梗塞と、心筋梗塞から起きる心臓の病気です。心筋梗塞は、発病が直接命にかかわる非常に怖い病気です。
心筋梗塞は文字どおり、心臓の栄養血管に梗塞が起きる病気です。梗塞とは、ある部分で血液の流れが止まってしまい、必要な血液を得られない箇所の心筋細胞が死んでしまうことです。
心臓は筋肉の塊のような臓器で、人が生きている間、絶えず収縮と拡張を繰り返し、全身に血液を送っています。ですから心臓の筋肉自体の細胞も、その活動のために多量の血液を必要としています。
心臓の筋肉に血液を供給している血管(冠動脈)に動脈硬化が起きていて、そこに血栓ができ血流が妨げられると、心臓の筋肉は途端に血液不足になります。そして激しい胸痛が起こります。これが心筋梗塞の発作です。1分1秒を争う状態なので、すぐに救急車を呼ぶ必要があります。
発作が治まったあとも、心臓の細胞はほとんど再生しないので、心筋梗塞で失われた範囲は、線維のような組織に置き換わってしまいます。その影響で、心臓の収縮・拡張が弱くなったり、心拍のリズムが乱れやすくなったりするなどの後遺症が残ります。 後遺症をできるだけ最小限に抑えるためにとにかく早く治療をすることが必要であります。
なお、発作の程度が軽くて心臓の筋肉が障害されずに済むのが、狭心症です。狭心症から心筋梗塞に進行するケースもあります。
狭心症
心臓は筋肉の固まりのような内臓で、絶えず収縮と拡張を繰り返し、血液を送り出しています。心臓から送り届けられる血液のおかげで全身の細胞は酸素と栄養素を得られ、生きて活動を続けられるわけです。
細胞が活動するのに必要な酸素と栄養素が血液によって運ばれてくるというこの仕組みは、心臓の筋肉「心筋」にも当てはまります。心筋の細胞も、血液を必要としているということです。
「冠動脈」と呼ばれる、心筋に血液を供給している血管が細くなると、心筋の血液が不足します。そのために、胸がぎゅっと締め付けられるような痛みが生じます。これが狭心症の発作です。症状が典型的なときは患者さん本人も心臓の発作だとわかります。しかしそうでないときは、胃の痛みや不快感、肩凝り、歯痛などと紛らわしいこともあります。
発作が起きるのは、冠動脈から供給される血液の量が、その時点で心筋が必要としている血液量を下回ったときです。このような事態が生じる理由は、大きく分けて2通りあります。 一つは、心臓の鼓動が早くなったとき(例えば階段を上ったり重い荷物を持ち運ぶとき、入浴中など)です。健康であればどんなに鼓動が早くなっても、冠動脈の血液供給予備能力の範ちゅうに収まり、発作は起こりません。ところが動脈硬化で冠動脈の予備能力が少なくなっていると、狭心症の発作が起きてしまいます。
もう一つは冠動脈が痙攣して細くなり、発作が起きるパターンです。運動などの刺激で冠動脈の痙攣が起こることもありますが、なにもしていないとき(例えば睡眠中)にも起こることがあります。
前者を「労作性狭心症」、後者を「冠攣縮性狭心症」といいます。頻度としては労作性狭心症のほうが多いのですが、日本人は欧米人に比べると冠攣縮性狭心症も少なくありません。 なお、「不安定狭心症」と呼ばれる病気もあります。この病気は発作の起こり方がやや異なり、冠動脈がほぼ完全に塞がってしまう心筋梗塞に近い状態としてとらえる必要もあります。
治療は狭心症・心筋梗塞ともに、狭くなったあるいは詰まってしまった冠動脈にカテーテルという細い管を使って風船を挿入し、冠動脈をできるだけもとの太さに戻す冠動脈形成術が行われます。カテーテル治療が困難な部位に病変がある場合は、冠動脈バイパス手術も検討されます。
心不全
心臓には、全身に血液を送り出すポンプ機能があります。心不全とは、この機能が低下して起きた状態を指します。
心不全になると、全身に十分な酸素と栄養が行き届かなくなり、一方では、全身をめぐった血液が心臓まで十分に戻らなくなってしまいます。
心不全には、急性心不全と慢性心不全があり、その原因には心筋梗塞、心筋症、心臓弁膜症、高血圧があります。急性心不全では、突然、心臓のポンプ機能が低下し、全身への血液の流れが不十分になってしまいます。 慢性心不全では、長い間心臓に負担がかかったり、心臓病をくり返すことで心臓のポンプ機能が弱ってくるため、全身に十分な血液を送ることができなくなります。 自覚症状は“疲れやすい”“だるい”“動悸がする”“浮腫みがでる”などがあります。治療としては、心筋梗塞・狭心症では冠動脈に風船を入れて膨らませ、動脈の流れを改善する冠動脈形成術や、冠動脈バイパス手術、心臓弁膜症では人工弁置換術などが行われます。また慢性心不全の治療としては、体内の余分な水分を取り除く「利尿剤」、心臓の働きを手助けする「ジギタリス剤」、心臓にかかる負担を軽くする「アンギオテンシン変換酵素阻害剤」や「血管拡張剤」、長期的には心臓に障害を与えやすい神経やホルモンの作用を抑制する「ベータ遮断剤」などの投与が行われます。
急性・慢性心不全の治療をしないでそのままにしておくと、どちらも死に至る場合があります。
心不全は現在、欧米では罹患率トップですが、日本の心不全の患者さんはおよそ25万人で、高齢になるほど患者さんの数は増加します。これは、加齢に伴う心臓の血管の老化や心臓への負担増加が影響するためと考えられています。また、生活や食習慣の欧米化も、血管の老化原因の1つです。
不整脈
不整脈とは、正常な発電ができない・電気信号がうまく伝わらない・余分な電気興奮が発生するなど、心臓における刺激伝導系の異常が原因で起きる病気です。
不整脈はおもに、期外収縮(きがいしゅうしゅく)、徐脈(じょみゃく)性不整脈、頻脈(ひんみゃく)性不整脈の3種類に分類されます。期外収縮があるといわれたら、原因の病気がないか、また期外収縮から危険な不整脈に移行する可能性がないかを一度は調べてもらったほうがよいでしょう。症状がある場合は抗不整脈薬や安定剤を服用します。症状がない場合でも、不整脈の原因となる疾患があって、しかも危険な不整脈に移行する可能性があれば、抗不整脈薬が必要になります。一方、症状のない心房性期外収縮のほとんどは治療の必要がありません。徐脈性不整脈には、洞不全症候群と房室ブロックがあります。洞不全症候群は、“発電所(洞結節)の異常によって、心臓を動かすための起爆剤となる電気が心臓の中で作られなくなる病気です。脈が遅いために失神やふらつきなどの症状が出現した場合は、ペースメーカーの植え込み手術が必要となります。症状がなくても、4秒以上の心停止が見つかった場合はペースメーカーを植え込むことがあります。房室ブロックは、心房と心室の境界にある電気の流れを調節する“変電所”の役目をする房室結節の病気です。この場所で電気がうまく伝わらなくなり、脈が遅くなります。この病気は重症度により1度、2度、3度に分けられますが1度または2度のブロックであれば、無症状であれば心配はいりません。ただし、心筋梗塞や心筋症のような病気に伴って2度~3度の房室ブロックが起こった場合は、極端に脈が遅くなったり、時に心臓がそのまま止まったりしてしまうことがありますから注意が必要です。房室ブロックは洞不全症候群と異なり、原因の病気が隠れていることが多いので、十分な検査が欠かせません。治療が必要なのは脈が遅いために失神やふらつき、息苦しいなどの症状が出現した場合です。症状が軽い時は薬を用いることもありますが、多くはペースメーカー手術が必要です。無症状でも、3度の房室ブロックがあるひとにはペースメーカーを植え込んだ方がよいとされています。
感染性胃腸炎
ノロウイルスによる感染性胃腸炎や食中毒は、一年を通して発生していますが、特に冬季に流行します。
ノロウイルスは手指や食品などを介して、経口で感染し、ヒトの腸管で増殖し、おう吐、下痢、腹痛などを起こします。健康な方は軽症で回復しますが、子どもやお年寄りなどでは脱水症状がでたり、重症化したり、吐物を誤って気道に詰まらせて死亡することもあります。感染力が非常に強く、少量のウイルス(10〜100個)でも感染・発症します。このウイルスは“ノンエンベローブウイルス”というウイルスで、エンベローブという脂質性の膜を持たず、アルコール消毒剤や熱に対する抵抗力が高いことが知られています。消毒は次亜塩素酸が用いられ、酸性アルコール剤が開発されています。
ノロウイルスについてはワクチンがなく、また、治療は輸液などの対症療法に限られます。
従って、感染者が出た場合は、患者さんの吐物や排泄物は、すばやく適切に、乾燥させる前に、消毒することが重要であります。また患者さんも周りの人も十分な手洗いをすること、手洗い後のタオルは別にすること、できれば、ディスポーザブルのペーパータオルを用いて手を吹きあげることなどが感染拡大を予防する上では極めて重要であります。
逆流性食道炎
もともと日本人はピロリ菌の感染率が高く、ピロリ菌が原因となる胃、十二指腸潰瘍や胃癌といった病気が多く認められています。そのせいか胃の病気については関心のある方は多かったのですが、食道の病気についてはあまり知られていませんでした。ところが最近は日本でも、逆流性食道炎が増えています。日本で逆流性食道炎の患者が増えている要因には、さまざまなものが考えられますが、その1つは、食生活の欧米化によって、肉類や乳製品、油っこいものなど、脂肪やタンパク質を多く摂取するようになったことが挙げられます。そもそも食道と胃の境界には、「下部食道括約筋」と呼ばれる筋肉が存在し、通常であれば食べ物が通るとき以外は、胃の内容物が逆流しないように、しっかりと閉じています。しかし、上記食品を摂り過ぎると、消化を助けるために「コレシストキニン」という消化管ホルモンが分泌され、このホルモンの作用によって、下部食道括約筋を緩んでしまいます。また、脂肪の多い食事をすると、胃の活動が活発になり過ぎて、胃酸の分泌量が増えます。そして、これらの食事は、消化に時間がかかり、胃での滞留時間が長くなります。これらのことから、欧米的な食生活は、逆流性食道炎を招きやすいのです。治療としては、これらの食品の過剰摂取を避けて、胃酸分泌を抑える薬剤を服用することが行われております。
胃・十二指腸潰瘍
最近は、ピロリ菌のことを知っている市民の方々も多くなってきました。この細菌が発見されたのは、実は今からたった20年あまり前のことに過ぎないのですが、この20年あまりの間に、世界中でたくさんの研究が行われた結果、ピロリ菌が胃炎や胃潰瘍などの病気に深く関わっていることが確実であると考えられるようになりました。そこで、この細菌の発見者であるオーストラリアのWarren先生とMarshall先生に2005年のノーベル医学・生理学賞が授与されています。
それでは、このピロリ菌はどんな細菌なのでしょうか?ピロリ菌の正式な名前はヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori)といいます。大きさは3~5ミクロン(1ミクロンは1mmの1000分の1の大きさ)にすぎませんので、目ではとても見ることができません。この細菌は体の端に鞭毛を数本持っていて、これを使って胃の粘液のなかを活発に動いていくと考えられています。通常、口から入った細菌は、胃酸で死んでしまいます。一方ピロリ菌は菌のなかにウレアーゼという酵素をたくさんもっており、この酵素が尿素からアンモニアを生成させ、アンモニアによって胃酸を中和させることで、胃内でも生存できるという特徴を持っています。
わが国では40歳以上の大半の方がこのピロリ菌に感染していると考えられております。若い人の感染率は低くなっていますが、それでもピロリ菌の感染者は、日本の総人口の約半数(6000万人)くらいと考えられています。1993年のデータでは、このうち2~3%前後が胃・十二指腸潰瘍を発症し、0.4%が胃がんを発症したといわれています。
このように大変多くの方々が感染しているだけでなく、ピロリ菌は胃炎や胃潰瘍のほかに、胃癌や胃のリンパ腫などの重大な病気にも関わりがあることがわかってきました。癌やリンパ腫というと怖い病気なので心配になる方も多いと思いますが、ピロリ菌に感染している人がだれでも癌になるわけではありませんので、あまり心配しすぎる必要はありません。実際、ピロリ菌に感染している人は普段は無症状の場合が多いのです。日本から除菌により胃がんの発生が3分の1に抑制されるという結果が発表され、大きな反響を呼んでいます。日本ヘリコバクター学会は、改訂ガイドラインでピロリ菌陽性者の除菌療法を積極的に勧めています。また、病気になるかどうかは体質や食べ物などの生活習慣、ピロリ菌の性質などによって決まるのではないかと考えられています。ただ日本人に感染しているピロリ菌の性質は、世界のほかの国々のピロリ菌と比べると病気を起こしやすい悪い性質を持っていることが神戸大学の研究で分かっています。胃が痛いなどの症状が続く方は、是非一度胃カメラ検査を受けていただくことをお勧め致します。
機能性ディスペプシアと過敏性腸症候群
胸焼けが続く、お腹がずっと張っているなどの症状で困っている方は意外に多くおられます。器質的な病気がないのに症状が出ることはあるのでしょうか?しかし、症状が出てるからにはなんらかの原因があるはずなのです.目に見えない異常がその原因ではないか?たしかに潰瘍や癌などの器質的疾患は胃カメラや超音波検査でわかるが、胃の働きや機能はこのような検査では明らかにすることは難しいのです.このような機能が障害されて症状が出ているのではないか、との考えからこのような疾患を機能性ディスペプシア(ディスペプシアとは上腹部の症状をあらわす英医学用語です)あるいは機能性胃腸症と呼ぶようになりました.この機能性ディスペプシアという言葉はあまり聞き慣れませんが、これまでいわゆる「慢性胃炎」「神経性胃炎」などとよばれてきたような病気がこれにあたります.治療は、消化管運動機能改善薬、酸分泌抑制薬が投与されますが、それでも症状が良くならない場合は、抗うつ薬や抗不安薬が使われることもあります。
この機能性ディスペプシアは主として胃や食道、すなわち上腹部の症状を訴える患者さんに対する診断名ですが、腸の機能性疾患の代表は過敏性腸症候群(IBS)と呼ばれています.この疾患は大腸に癌やポリープなどの器質的疾患がないのにもかかわらず腹痛や排便異常を訴える疾患です.おなかの痛み(腹痛)があって、それが排便によって軽快する(楽になる)という症状が典型的なものです.いつも便秘するという「便秘型」、下痢と主体とする「下痢型」、両者が交替に生じる「交替型」の三つの型があります.日本でも多くの患者さんがこのIBSで悩んでおられます.下痢型IBSの治療としては食事療法や運動療法をはじめとするライフスタイルの改善が必要ですが、それでも十分な効果が得られない場合は、薬物治療を行います。薬物治療としてはセロトニン5HT3受容体拮抗薬、高分子重合体、消化管運動調節薬、乳酸菌製剤、抗コリン薬などが使われます。
過活動性膀胱
膀胱に尿が十分に溜まっていないのに、膀胱が自分の意思とは関係なく勝手に収縮するという病気で、急に尿がしたくなって我慢ができず(尿意切迫感)、トイレに何回も行くようになります。過活動膀胱は日本で800万人以上の男女が罹患する頻度の多い病気です。40歳以上の男女の8人に1人が、過活動膀胱の症状をもっていることが、最近の調査でわかりました。脳卒中、パーキンソン病などの脳や脊髄の病気のために、膀胱のコントロールが効かなくなる、前立腺肥大症による排尿障害のために膀胱が過敏になる、などの原因で発生しますが、加齢による老化現象としても起こったり、原因が不明(明らかな基礎疾患がない)なことも少なくありません。尿が間に合わずにもれてしまうこともあります(切迫性尿失禁)。1回の排尿量は少なく、何回もトイレに行くようになります。治療は、男性では、前立腺肥大症の薬物療法として、おもに「α1受容体遮断薬」「抗男性ホルモン薬」「漢方薬、植物製剤」などが使われます。また過活動膀胱には主に「抗コリン薬」が使われます。女性では、「抗コリン薬」が使われますが、骨盤底筋を鍛える行動療法や、同筋の収縮力を高めるために、電気刺激治療が行われています。